大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 昭和48年(ワ)2665号 判決 1974年5月17日

主文

1  被告は、原告に対し、金四〇万円を支払え。

2  被告は、原告に対し右金員に対する昭和四八年一二月二七日からその支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

1  原告は「被告は原告に対し金四〇万円とこれに対する本件訴状送達の日の翌日から右支払済にいたるまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言を求め、別紙記載のように請求の原因を述べた。

2  被告は、法定の手続による呼出を受けながら、本件口頭弁論期日に出頭しないし、また答弁書その他の準備書面も提出しない。

(別紙)

請求原因

一、被告は、原告に対し、左記の事実関係を主張して、昭和四七年一月一八日に訴訟を提起し、これは名古屋簡易裁判所昭和四七年(ハ)第二八号事件として係属し、同裁判所で仮執行宣言付の被告(本件被告のこと、以下同じ)全部勝訴の判決をえたが、これに対し同年中に原告(本件原告のこと、以下同じ)が控訴をなし、これは名古屋地方裁判所昭和四七年(レ)第六七号事件として係属したが、同裁判所は昭和四八年七月に原判決を全部取消して、被告の全面敗訴の判決を言渡した。

被告は、名古屋市千種区高見町六丁目一番地に一〇室を有するアパートを所有、経営しているものであるが、被告は昭和四〇年頃訴外池内一二三に対し、右アパートの一室を賃料一ケ月一万五、〇〇〇円で賃貸したところ、同人は昭和四五年一一月末頃右室を明渡をしたが、原告は被告に無断で昭和四五年一二月二三日頃から右室に電話二本を設置して右室を占有し、昭和四七年三月八日にいたり漸く右電話を撤去した。このため、被告は昭和四五年一二月二三日頃から昭和四七年三月八日頃までの間(弁論の全趣旨に照らし本件訴状中、右四七年(ハ)第二八号事件に関し、昭和四五年一二月一日から昭和四六年一二月三一日まで、とある点は誤記と認めて訂正する)一ケ月金一万五、〇〇〇円の割合による賃料相当の損害を蒙つたので、原告に対し二一万七、五〇〇円(前同様、本件訴状中右事件に関し一九万五、〇〇〇円とある点は誤記と認めて訂正する)の支払を求める、というのである。

二、しかし、事実関係の真相はつぎのとおりである。すなわち、なるほど、被告は訴外池内にその主張のような室を賃貸したことはあつたのであるが、被告と池内との右の賃貸借関係は昭和四七年二月頃までは継続していたのであり、かつ、原告は池内に対する債権に対する代物弁済として池内から右電話二本の電話加入権の提供を受けて、昭和四五年一二月二三日これの名義書替をしたものにすぎず、この名義書替後も原告は右電話の電話機二台をそのまま本件室に設置して池内にその使用を認め、原告において右電話や本件室を使用占有したことのないことはもとより、池内または被告に対して右室の使用を求めたこともないものであつて、原告が右室を使用占有したことは全くない、のである。

三、右の真相は、被告において初めからよく認識していたところであり、仮にそうでなくても、被告が事実関係を多少なりとも調査すればすぐ分ることであるのに被告はこれを全然なさず、とくに、被告は昭和四七年二月頃からはアパート所有者として右室に立入り現実に右室のみならず右電話をも使用していたのであるから、被告は少くとも同月頃には右二、のことを充分承知していたものである。

四、しかるに、被告は、自己に原告に対する権利がないことを知りながら、又は、右権利の存否等につき何らの調査、確認もせずに漫然と非常識にも原告に対し前記の訴訟を提起しこれを追行し、かつ、前記のようにその後に控訴審で取消された第一審の仮執行宣言つき判決に基き、昭和四七年六月頃名古屋地方裁判所に対し原告に対する強制執行として不動産強制競売の申立をなし、そのため原告をして同月三〇日頃強制競売開始決定と不動産の差押をうけせしめたものであつて、従つて被告の右の行為は原告に対する不当訴訟および不当執行による不法行為となるところ、原告は、右訴訟に応訴し、自己の権利を防禦するため弁護士山口源一等にその訴訟代理を委任することを余儀なくさせられ、原告はこのためその弁護士費用合計一〇万円を支出し、同額の損害を蒙り、かつ、右不当執行により手広く材木商を営んでいる原告はその信用を毀損され信用毀損による原告の営業上の損害は三〇万円である。

五、よつて、原告は民法七〇九条、七一〇条に基き、右不当執行による損害については、なお、民訴一九八条二項に基き、本訴に及ぶ。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例